Atelier BAUM|Isetan Shinjuku department
Atelier BAUM|Isetan Shinjuku department
"樹木の恵み"に着目した資生堂のスキン&マインドブランド BAUM(バウム)の百貨店内店舗の内装計画。
弊社がデザインを手掛けた大阪 阪急うめだ本店に続き、2店舗目の東京 伊勢丹新宿本店内の内装計画である。世界各国のスキンケアやサプリメントなどナチュラルアイテムが揃う地下2階フロアにおいて、ブランドイメージを向上させBAUMの循環思想のメッセージを伝えるための訴求力のある店舗空間が求められた。
1店舗目からの「森をさわる」というコンセプトを引き継ぎ、「自然素材のラフで豊かな表情とクラフトに見られる繊細なディテール」「静寂さと温かさ」など一見すると相反し合うマテリアルとデザインディテールの要素を空間にバランスよく織り交ぜ、美しい森の中に存在する職人のアトリエのような、心地よくもエッジを効かせた空間を目指した。また、1店舗目は「広葉樹の森」をモチーフに空間デザインを行なったが、姉妹店として2店舗目は「針葉樹の森」をモチーフにデザインした。
メインマテリアルとして使用しているForestBankは、製材された木材だけでなく森林そのものが持つ多様な価値に着目し、木材資源として使用されることの少ない小径木や枝葉、樹皮、実、その森の土など樹木にまつわる様々な物を、反応性ミネラルベースと有機溶剤・VOCを一切使用しない完全水性アクリル樹脂と混ぜ合わせオリジナルで開発している。今回はBAUMが植樹活動を行なっている愛媛県内に位置する”BAUM ひのきの森”から採集した枝葉や、規格外になり使われなくなった商品の木製パーツやその端材までもそのままの姿で混ぜ合わせて特注で製作した。
さらに今回のマテリアルは、実際に店舗に立つ百貨店・ブランドスタッフと共に、作業着を着て電動ミキサーを手にし文字通り汗水垂らしながら製作を行なった。こうすることで、設計者だけでなく店舗スタッフの方々にも”自分の手でお店を作った"という意識が芽生え、ブランドコンセプトやストアデザインについてより深く理解し、お客さまとのコミュニケーションが推進することを狙っている。
什器デザインの色彩や形状は「針葉樹の森」をイメージし、天板には天に真っ直ぐ伸びる樹木をレファレンスに、ひのきの丸棒によるデザインを象徴的に施した。通路側から見ると手前の商品の背景として機能し、近づくと丸棒の隙間から奥の商品が見え隠れし、店内へと客足を誘導させるパーテーションのような役割を果たしている。象徴的なアイランド什器を囲む構成にすることで回遊性あるスムーズな動線を計画した。什器だけでなく壁面タイルや天板などのマテリアルもForestBankの製作方法を応用し全てオリジナルで製作することで空間全体に統一感が生まれるようデザインしている。
BAUMが掲げる「樹木との共生」の哲学をさまざまな角度から感覚的に捉え、香り成分を体験できるエリアやサステナブルウォールと称した壁面棚には、オークやヒノキを中心とした苗木を育成し、実際に成長していく様子や木製パーツが作られる過程などを展示。BAUMの循環思想のブランドストーリーをインテリアデザインを通してお客さまへ伝えるため、店舗内のあらゆる要素から視覚・聴覚・触覚・嗅覚で生命の息吹や循環を感じる森の中のような、感性で樹木に「触れる」体験を生み出す場所になるよう工夫した。店舗内で育った苗木は"BAUM ひのきの森"に植樹される。商品と店舗と森、さらにその先の未来へ向けたBAUMの循環思想を表現する代表的な店舗となった。
プロジェクトタイトル:Atelier BAUM Isetan Shinjuku department
コンセプトデザイン: 狩野佑真 (NOU Inc.)
インテリアデザイン: 狩野佑真 (NOU Inc.)
デザインアシスタント : 泉田剛 (NOU Inc.)
クリエイティブディレクション : 信藤洋二 (資生堂クリエイティブ)
アートティブディレクション : 岸野桃子 (資生堂クリエイティブ)
プロデュース : 西脇文美、林順子 (資生堂)
実施設計 : 大野千佳
クライアント : 資生堂
施工:大日本印刷
主要用途:スキンケア販売店
所在:東京、新宿
延床面積:24.4m2
設計期間:2023年8月~12月
施工期間:2024年1月
竣工写真:長谷川健太
メイキング写真 : 小髙彩子