Breathing Skyscraper
Breathing Skyscraper
呼吸する超高層
東京駅から程近い都心に2019年7月に竣工したミュージアムタワー京橋(設計:日建設計)。ミュージアムタワーという名称のとおり、オフィスと美術館(アーティゾン美術館)の一体的デザインがこのビルの大きな特徴である。文化的な特徴としては、美術館という存在はもとより、オフィス階の各所にアート的な要素が散りばめられ、働く人、訪れる人が芸術・文化に触れ、心地よい刺激を得る。ビル設計の特徴としては、4面のファサードに設けられた離散型ルーバーがある。ルーバー単体は、全て同じ断面形状で製作された6つの部材で構成されているが、方位により年間の光や風を効率的に反射・拡散したり、内部から外部への展望による開放性も考慮されたコンピュテーショ ナルデザインによって最適角度配置となっている。光や空気の流れを導くそのファサードの装いはまるで「呼吸する超高層」のようである。
今回の展示企画ではビル竣工5周年を記念して、オフィスエントランス空間を会場として、当ビルにおける「これまで/これからの活動」を紹介する内容やビルの機能面を紹介することが求められ、NOU Inc.がクリエイティブディレクションを行い、コンセプト設計・会場構成・空間インスタレーションをデザインした。
上部の空間インスタレーションとしては、ビル4面のファサードの特徴を、より感覚的に4枚の大きなファブリックで表現し伝えることができないかと考えた。天高8mの上部に吊り下げられたファブリックのコンセプトは入口側から「光のカーテン」「呼吸するルーバー」「空気の導き」「都市と自然の融合」である。全体として調和が取れていながらも全て違うマテリアルや加工法で構成されており、プログラミングのよる演出でそれぞれが呼吸するかのように回転することで空間に空気の流れを作り出し、互いに呼応し響き合う。その光景は、まるでこのビルの「呼吸する超高層」の見えない動きを見ているかのような感覚を想起させることを狙った。
底部では、当ビルの「これまで」と「これから」をビルの詳しい情報とともに展示し、 「Work with Art」というコンセプトを掲げるこのビルの可能性や、芸術文化の拠点となるような多様な活動を展開していく未来像を展示している。
上部と底部の空間構成を明確にすることで伝える情報をきちんと分け、オフィス来訪者だけでなく美術館を訪れる人々や街ゆく人々のアイキャッチにもなるような空間構成を行った。
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クリエイティブディレクター / デザイナー|狩野 佑真 (NOU Inc.)
デザイナー|布川 光郷 / 諸戸 里帆 (HAKUTEN CREATIVE)
テクニカルディレクター|三谷 悠人 (HAKUTEN CREATIVE)
クリエイティブエンジニア|中川 丘 (HAKUTEN CREATIVE)
施工マネージメント|熊崎 耕平 (HAKUTEN CREATIVE)
プロデューサー|楯 誠志郎 (HAKUTEN CREATIVE)
グラフィックデザイン|山野 英之 / 桑原 遼 (TAKAIYAMA Inc.)
和紙製作|川原 隆邦
メッシュ製作|株式会社 NBC メッシュテック
ブランディングディレクション|株式会社アクシス
クライアント|株式会社永坂産業
写真|長谷川 健太、小髙 彩子
映像|小髙 雄平