日常の”生活風景”をデザインに落とし込んだ、集合住宅ならではのコミュニケーションを促す装置としてのサイン計画。
築28年の旧社員寮を改修したファミリー層向けの147戸からなる集合住宅。住戸の改修だけでなく、建築の共用部にはシェアキッチンや多目的スペース、パーゴラ、シェアランドリー、音楽スタジオ、屋上デッキなど多くの機能が新たに設けられ、屋外にはフルーツガーデンなどのグリーンコモン、EV充電場や洗車スペース、シェアキッチンに隣接するカフェや路上に開かれたベンチなども設置された。そこに住まう人々だけでなく、地域住民も流動的に建築内外を行き来する、町に開いた建築となることが想定された。

サイン計画は、この新たな共用部分のあり方に対して「コミュニケーションを促す装置としてのサイン」をコンセプトに、誰にでも伝わりやすく、暮らしの中に溶け込む、生活の中で触れ合うモチーフを用いながらデザインした。洗濯物のような案内板、時計のような階数表示、定規のような身長計など、サインがただの機能としてだけでなく、遊び心があり、これをきっかけに会話が生まれるような装置として存在することを目指した。また、改修計画であることから、屋内階段やゴミ捨て場、駐輪場など、ある程度元の姿を留めざるを得ない場所があり、そのような建築的に手を入れられなく、日常生活に欠かせないけれど雑然となりがちな空間に対しては、あえてグラフィカルなデザインを大胆に用いて場に暖かみを与え、丁寧に利用してもらえるよう心がけた。靴揃えマークや柱に施された身長計、駐輪場壁面の横断歩道マークなど、家族間の教育やコミュニケーションのきっかけとなるような、子供から大人まで成長とともに生活に寄り添うデザインを目指した。